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平板載荷試験

平板載荷試験は、基礎を設置する深さまで掘削を行い、基礎に見立てた小さな鋼板(載荷板:直径30cmの円盤)を置いて実際の建物の重量に見合う荷重をかけて沈下量を測定し、地盤が安全に支持する力を判定する試験です。比較的短時間に地盤の支持力を直接的に測定できる利点がありますが、作業スペースがやや大きいことが短所です。

計測装置概略


図1 平板載荷試験計測装置概略図


図2 載荷装置拡大図

試験の手順

① 試験位置の選定
載荷試験は、構造物の種類、規模、基礎の大きさおよび支持地盤の土層構成などを十分に検討し、地盤を代表しうる地点を選定して行う。

② 試験地盤面の整形および養生 図1

  • 試験地盤面は載荷板の中心から1m以上の範囲を水平に整地します。ただし、最終的な整形は地盤の変化や乱れを避けるために試験直前に行います。また、試験地盤面の状況は十分に観察しておきます。
  • 載荷板を置く部分は、地盤を乱すことのないよう水平で平滑な面に整形します。
  • 試験地盤面は試験期間中地盤の状態が変化しないように養生します。

③ 載荷板の設置 図2
載荷板は仕上げ整形した試験地盤面に水平で一様に密着するように設置します。載荷板の設置に際して特に留意しなければならないことは、載荷板そのものを水平に設置することです。載荷板が水平に設置されていない状態で試験を実施すると、載荷板の低い方向に応力が集中し、試験地盤固有支持特性を得られないことになってしまいます。

④ 載荷装置の組立て
載荷装置は、ジャッキ、支柱、載荷ばりおよび反力装置(重機など)から構成され、載荷板に偏心荷重が加わらないように組立てます。
載荷装置としては次のような条件が必要となります。

  • 計画最大荷重に対し、120%以上の載荷能力を持つ構造であること。
  • 載荷重を無理なく各部に伝達し、載荷板に偏心荷重が作用しないような構造とすること。
  • 荷重を安全に操作でき、かつ、無負荷に近い状態にもできること。
  • 気象の変化や載荷板の沈下によって支障が生じないこと。
  • 装置全体が、組立て・試験・解体等の作業が安全に実施できる構造であること。

⑤ 載荷方法
載荷方法は、戸建住宅建築の場合、測定の目的が地盤の支持特性の把握にあるため、1サイクル方式が一般的に行われています。載荷は第1段階の荷重を越えない範囲で予備載荷を行った後に下記の様に行います。

  • 荷重は、計画最大荷重を原則として8段階以上に等分割して載荷します。
  • 荷重の増減は、速やかに一定速度で行います。
  • 荷重保持時間は30分程度の一定時間とし、除荷及び再載荷については、5分程度の一定時間とする。

尚、予備載荷は急速繰返しにより行い、その都度荷重と沈下を測定する。
予備載荷の目的は、4個の変位計(ダイヤルゲージ)が正常に作動することを確認することと、地盤の表面と載荷板との接触部分の乱れの程度を把握することです。
(図3)

⑥ 沈下量の測定
沈下の測定は、各荷重段階において所定の荷重に達した後、原則として経過時間0分、1分、2分、5分、10分、15分、20分、25分、30分とし、最大荷重載荷後は、5分間隔で各荷重を段階ごとに順次減圧して荷重の戻しに対する沈下量の復元を測定します。
沈下量は、載荷板の4隅から基準梁に設置した4個のダイヤルゲージで1/100mm単位まで読み取ったものの算術平均値とした。

  • 荷重強さ(kN/㎡)と実荷重(kN)
    直径30cmの円形載荷板の接地面積は A=0.15×0.15×π=0.07(㎡)であることから、
    実荷重(kN)= 0.07(㎡)× 荷重強さ(kN/㎡) により求める。

平板載荷試験結果の記録と判定方法

1) 平板載荷試験の結果
平板載荷試験の結果は、図4に示す●荷重-沈下曲線、●時間-荷重曲線、●時間-沈下曲線で表されます。

図4 地耐力平板載荷試験結果模式表(荷重-沈下-時間曲線)


2) 試験結果の判定
(1) 極限支持力(Pu)の判定
極限支持力は、「荷重-沈下量曲線」で沈下が急激に増大し始めるとき、もしくは載荷板やその周辺地盤の状況が急激に変化し、載荷が難しくなり始めたときの単位面積あたりの荷重として求める。
この様な形で極限支持力が現れることはまれであるため、実際には沈下が5㎝(載荷板直径の15%)を超えない範囲に於いて、次のうちいずれか小さな値とする。

  • 沈下の増加が大きくなり、沈下が直線的に増加し始める荷重 (図5)
  • logP-S曲線が沈下軸にほぼ平行になり始める荷重 (図6)

図5 P-S曲線

図6 S-logP曲線

尚、最大沈下量が3㎝を超えている場合は、実務的には載荷板直径の10%の沈下量に相当する荷重を、極限支持力としても大きな誤りはない。極限支持力が求められたら、その1/3として長期許容地耐力 qa値 が求められる。

(2) 長期許容支持力(qa)の判定

  • 極限荷重度の3分の1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ①
  • 降伏荷重度の2分の1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ② ※注1)

①,②の内いずれか小さい方の値を以って、地盤の許容支持力度とする。

※注1
従来から載荷重と沈下量を両対数グラフなどにプロットし、この曲線の折れ点に相当する載荷重を降伏荷重として重要視 してきたが、降伏荷重に対する定義が不明確であるとして、試験結果の評価として求めないこととしている。 但し、実 務面で、対象となる構造物の分野(建築または土木)或いは行政機関などによって異なり、「建築基準法施行令」に基づ いて地盤の支持力を求める場合は、降伏荷重の値が必要となることも多い。 この場合、明瞭な折曲点が認められれば、 これを降伏荷重と扱っても問題は無いが、累計沈下量が少なく折曲点の判断が難しい場合は、無理に降伏荷重を求める必 要は無い。 (「地盤調査の方法と解説」社団法人地盤工学会 より)

(3) 降伏荷重の判定

図7 logP-logS曲線 図8 ΔS/log t - P曲線 図9 S-logt曲線

  • 図7に示したように、荷重強さPとその荷重強さでの最終の沈下量Sとの関係を両対数紙上にプロットした場合、これらの測定点を結ぶ直線が急折する点を見出し、その点の荷重強さをもって降伏荷重とする。
  • 図8に示したように、各荷重段階に於けるΔt時間内での沈下量の増分をΔSとし、Δt間の対数値の差をΔlogt として、ΔS/Δlogtとの関係を普通目盛でプロットした場合、直線が急折する点の荷重強さをもって降伏荷重とする。
    尚、この場合ΔS/Δlogtは、各荷重階に於ける沈下速度を示している。
  • 図9に示したように、Sを普通目盛で縦軸に、tを対数目盛で横軸とする片対数紙上に書くか十段階の測定値をプロットし、これらを直線で結んだ場合、左図に示すように低荷重強さの場合の直線から、沈下が増加する方向に向かって形が曲線を示す様になる限界、または直線上の勾配が急増する限界にあたる荷重強さを降伏荷重とする。

(4) 地盤反力係数 kv

地盤反力係数は、地盤面上に加えられたある圧力とそれによる地盤面の変形量との比をいい、単サイクル場合、各荷重段階の最終沈下量を包括する「荷重-沈下曲線」を基に次式によって算出できる。

地盤反力係数は次式で求める。


ここで

Δp: 荷重の範囲  (kN/㎡)
p1: 原則としてゼロ荷重とする。   但し、初期の沈下状態に地盤の影響が認められる場合には、これらの影響 が認められなくなったと判断される最小の荷重とする。 (kN/㎡)
ΔS:Δpに対応する沈下 (m)
p2:原則として最大荷重の1/3の荷重とする。 (kN/㎡)
S1,S2:それぞれp1,p2に対応する沈下量。 (㎜)

構造物基礎の設計には基礎の接地圧分布に関する情報が必要であるが、これは地盤と基礎の特性により多様に変化する。 そこで実用の観点から簡単化した仮定に基づいた接地圧の算定が通常行われている。 すなわち、載荷面の任意の微小要素について圧力pと沈下量Sの間に次式の関係が成立すると仮定している。

ここで

p: 地盤反力(subgrade reaction)
KV: 地盤反力係数(modulus of subgrade reaction)
S:沈下量(settlement)

注意事項

  • 試験で求められる支持特性は、載荷板の1.5~2.0倍(深さ45~60㎝程度)の範囲の地盤が対象となる。
  • 載荷荷重、沈下量と載荷板の幅との比をまとめると、地盤が等方均質であれば、載荷板の大きさは試験結果の評価にはあまり影響を与えないことが判っている。

3) 試験結果の利用 (参考)

(1)許容支持力の算定

平板載荷試験の結果から地盤の許容支持力を求める場合、対象となる構造物の分野(建築又は土木)或いは行政機関等により異なるが、下記の三つの方法のいずれかを利用することが多い。

建築基準法施行令・国土交通省告示第1113号」による場合平板載荷試験結果をそのまま適用する方法で、住宅の支持力確認などに広く利用されている。

ここで
qa: 地盤の長期許容支持力(kN/㎡)
qt: 平板載荷試験による降伏荷重の1/2或いは極限荷重の1/3の内いずれか小さい値(kN/㎡)
N': 地盤の支持力係数
(締まった砂質地盤:12,緩い砂質地盤:6,粘性土地盤:3)
γ2: 基礎底面より上にある地盤の単位体積重量(kN/㎡)
Df: 基礎底面までの深さ(m)

「建築基礎構造設計指針」による場合
平板載荷試験の極限支持力 Pu から、次式を用いて支持地盤の支持力係数 cNc 或いは γ1Nr を算出し、Terzaghi の支持力公式により算定する。
粘性土地盤の場合   砂質土地盤の場合
ここで
Pu: 平板載荷試験から求められる地盤の極限支持力(kN/㎡)
cNc: 支持地盤の粘着力Cの項目を含めた支持力係数(kN/㎡)
γ1Nr: 支持地盤の単位体積重量γ1の項目を含めた支持力係数(kN/㎡)
αt,βt: 試験に用いた載荷板の形状係数 (30㎝の円板の場合、αt=1.2,βt=0.3)
Bt: 載荷板の幅(m)
上記値を下記 Terzaghi の式 に代入し、算定する。

「道路橋示方書・同解説」による場合
土木構造物の場合、土質試験結果や過去の経験から求めた粘着力C、せん断抵抗角φを平板 載荷試験結果に当てはめ確認し、これにより確認したC,φを用いて Terzaghiの支持力公式により算定する。
尚、C,φの確認は次式により行う

ここで
Pu: 平板載荷試験から求められる地盤の極限支持力(ここでは実荷重を指す)(kN)
極限荷重の判定が困難な場合は、降伏荷重を求め、その1.5倍値を採用して良い。
B: 載荷板の直径(m)
C: 地盤の粘着力(kN/㎡)
γ1: 支持地盤の単位体積重量(kN/㎡)
Nc,Nr: 地盤のせん断抵抗角φにより設定される支持力係数
Sc,Sr: 支持力係数の寸法効果に関する補正係数
土質試験結果等が無い場合、砂質土層では粘着力C=0、粘性土層ではせん断抵抗角φ=0° と扱う

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