浅井戸と深井戸
東京、大阪などの大都会を除く多くの市町村の上水道水源は井戸に頼っています。日本中の上水道使用水量の約1/3が地下水です。また、工場などで使う工業用水は、約半分が地下水です。このほか、井戸からくみ上げられる地下水は、ビルの冷房用とか潅漑用水などに使われています。
井戸といっても、いろいろなものがあります。農家の庭先にある石垣を組んだ浅い井戸や、町の上水道の水源のように何100mも機械で掘った鉄管入りの深い井戸、段丘崖などからトンネル式に横に掘った横井戸など型はさまざまです。しかし、とっている地下水はほとんど皆、地層水とよばれる地層中にある地下水です。
地層水は、砂つぶや礫の間の隙間にある水で、ちょうど海岸の砂浜や河原で孔を掘ると、湧き出してくるような水です。砂浜で乾いた砂を堀り進むと少しずつ湿り気のある砂に変わり、ついに、ある深さより深くなると水がたまり始めます。この水たまりの水面を地下水面とよびます。そして、この面から下の砂つぶの間の隙間は、すべて水で満たされています。(地下水を含む地層を帯水層とよびます。)
実際の井戸の場合は、上から下まで全部同じような砂というように単純ではありませんが、一般的には、下図に示したような状態になっています。
前の砂浜の例で、湿り気を含んだ砂がでてきたあたりが毛管帯とよばれる部分で、地下水面から毛細管の原理で狭い砂つぶの間を水がのぼっているところです。したがって、この毛管帯は砂つぶの間に水と空気の両方が入り込んでいるわけで、この部分から上を通気帯とよびます。
毛細管は、細いほど高くまで水をもち上げますが、地下水の場合も地層をつくっている砂つぶや土が細かいほど、この毛管帯の高さは高くなります。
砂浜の地下水の例のように、地下水面の上に毛細管状の通気帯をもつ地下水を不圧地下水とよび、不圧水をくむ井戸を浅井戸といいます。これに対して、下図の右側の深井戸のように孔をあけた鉄管などを水を通しにくい粘土層やシルト層の下の砂礫層に入れると、その砂礫層の上面より高いところまで地下水があがってくる場合があります。このような地下水を被圧水と呼び、被圧水を含む井戸はどんなに浅くても深井戸と呼びます。